『失われた時を求めて』
コズミック・ダイアリー1999より
時間の秩序から解放された瞬間が、
時間の秩序から解放された人間を再び創造したのだ、われわれのなかに。
それは、時間の秩序から解放されたその瞬間を精神的に強く感じるために。
プルースト『失われた時を求めて』の第七篇「見い出された時」より
(プレイヤッド版Ⅲp873)
突然、わたしは眠くなった。わたしは重い眠りに落ちた。
重い眠り、---その時、われわれにベールをとるように明かされたもの。
それは、幼年期にもどってしまうこと。
過ぎ去った年月がもどってくること。
そして、失われた感情がもどってくること。
魂の肉体からの離脱。
魂の転生。
死者の霊を呼び起こすこと。
狂気のような幻覚。
もっとも原初的な自然界の摂理への回帰。
知りえないものと信じこんでいる、これらの神秘的なこと。
実際には、ほとんど毎晩のように、私たちは、その秘儀を教えこまれているのだ。
ちょうど、あの人類滅亡や、イエスの復活というもうひとつの大秘儀を教えこまれるのと同じ様に、
これらの神秘的なことを、私たちは毎晩のように、教えこまれているのだ。
プルースト『失われた時を求めて』の第二篇「花咲く乙女たちのかげに」より
(プレヤッド版Ⅰp819-820)
翻訳 柳瀬 宏秀